メグミロク

英検1級保持者・日米交歓ディベート 日本代表が英語教育やディベートについてデータを用いながら解説するブログです。

ディベートのフォーマットと話者の責任

明けましておめでとうございます!

久しくブログを書いていませんでしたが、今年は毎週1つは記事をあげてoutputの機会を増やして行きたいと思います。みなさんとも活発に議論ができれば嬉しいです。

 

さて、今回のブログではディベートのフォーマットとスピーカーの役割について書いていきたいと思います。

 

政策ディベートの主なフォーマット

政策ディベート(Policy Debate)のフォーマットは大会によって異なります。

このようには代表的なものをいくつか列挙します。

1. 日本のディベート甲子園で使われているフォーマット

肯定側立論   6分

否定側質疑   3分

否定側立論   6分

肯定側質疑   3分

否定側第一反駁 4分

肯定側第一反駁 4分

否定側第二反駁 4分

肯定側第二反駁 4分

(天白達也、2018、競技ディベートマニュアル、竹藪書房、p.35) 

2. 日本ディベート協会(JDA)主催大会のフォーマット

肯定側第一立論 (1AC)  6分

否定側質疑   (1NQ)  3分

否定側第一立論 (1NC)  6分

肯定側質疑   (1AQ)  3分

肯定側第二立論 (2AC)  6分

否定側質疑   (2NQ)       3分

否定側第二立論 (2NC)  6分

肯定側質疑   (2AQ)       3分

否定側第一反駁 (1NR)  4分

肯定側第一反駁 (1AR)  4分

否定側第二反駁 (2NR)  4分

肯定側第二反駁 (2AR)  4分

(天白達也、2018、競技ディベートマニュアル、竹藪書房、pp.35-36) 

3. アメリカの政策ディベートで用いられるフォーマット

肯定側第一立論   (1AC)        9分

否定側質疑        (1NQ)  3分

否定側第一立論   (1NC)   9分

肯定側質疑        (1AQ)  3分

肯定側第二立論 (2AC)  9分

否定側質疑   (2NQ)       3分

否定側第二立論 (2NC)  9分

肯定側質疑   (2AQ)       3分

否定側第一反駁 (1NR)  6分

肯定側第一反駁 (1AR)  6分

否定側第二反駁 (2NR)  6分

肯定側第二反駁 (2AR)  6分

(Hahn, Allison and Hahn, Taylor Ward and Hobeika, Marie-Odile N. (2013) Finding Your Voice: A Comprehensive Guide to Collegiate Policy Debate. International Debate Education Association. ISBN 1617700517)

 

ここでは3つの型を紹介しました。2つめと3つめのフォーマットは時間が唯一の違いであることが分かります。また、どの型にも共通することは肯定側(Affirmative)と否定側(Negative)に同じ時間だけ話すことが認められているということです。では具体的に各スピーカーにどのような役割が求められるのでしょうか。

 

スピーカーの役割

ここでは最初のディベート甲子園で使われているフォーマットをもとに話者の役割を書いていきたいと思います。

 

①肯定側立論ー主な議論を証拠と論拠をもとに論じる

 肯定側の立論で含む必要があるのはプランとアドバンテージです。

プランは政策のようなもので、どのような人に向けて、誰が、その論題を実行するのかをプランとして掲げたり、論題の中での曖昧な語彙を定義したりします。例えば「日本は外国人労働者の受け入れを大幅に拡大すべきである。是か非か。」という論題であったら、外国人労働者とは誰なのか、受け入れを拡大するとはどういうことなのか、いつまでに受け入れるのかなどを提示する必要があります。 

アドバンテージとはプランをとった場合生じるメリットのことです。上記の例であれば外国人労働者を受け入れることによって日本の労働者不足の問題が解決されるなどといったものを言います。どのようにアドバンテージを構成するかについては次のブログで紹介します。

 

②否定側質疑ー聞き取れなかったことを聞いたり相手の議論の弱みをつく

質疑では立論で聞き逃してしまったことを質問したり相手の議論の弱いところを攻撃したりします。質疑で大切なことは議論をしないことです。あくまで質問をする場なので議論をするのではなく簡潔な質問をすることを心がけましょう。では相手の弱みを攻撃するというのはどうすればいいのでしょうか。

例えば、相手の証拠資料に注目してみてください。その証拠資料の年代、書いた人、言っている証拠と主張があっているかなどを批判的に捉えてみましょう。1980年の資料を引用して日本の経済は良くなっていると言われても説得力がありません。またコミュニケーション学の専門家がミトコンドリアの話をしていても説得力がないでしょう(その人がミトコンドリアについても権威がある人であれば別ですが)。主張と証拠資料がマッチしてないことも多々あります。前回のブログに書いた主張・論拠・証拠がマッチしているのかもクリティカルに捉えてみましょう。このように分析すれば相手の議論の弱いところが見つかるはずです。

 

③否定側立論ープラン採択後のデメリットを提示する

否定側の立論ではプランを提示する必要はありません。否定側はプランをとった後デメリットが起こると議論します。そしてそのデメリットメリットよりも深刻であると論証します。例えば外国人労働者が来ると排外主義が進むなどの議論です。否定側は現状で問題が起こっていない。しかしプランをとってしまうと悪いことが起きてしまうと訴えなければなりません。どのように議論を構成するかは肯定側立論と同様別のブログでお伝えします。

 

④肯定側質疑ー聞き取れなかったことを聞いたり相手の議論の弱みをつく

②と同様です。

 

⑤否定側第一反駁ー①肯定側立論を間違いであると議論する

ここでは否定側が肯定側の立論で出された主張に「反駁」をします。質疑での相手の回答や準備してきた証拠資料などを使い肯定側立論に反対し論じ返します。また、時間の余裕がある場合は否定側立論での主張を強める証拠資料を読むこともできます。しかし、新しい議論を出すことはできません。つまり立論で提示されていない議論は反駁では出せないのです。

 

⑥肯定側第一反駁ー③否定側第一立論を否定しながら自分たちの論を守る

肯定側の反駁がやらなければいけないことは否定側よりも多く大変です。まずは否定側立論で主張された議論を「反駁」します。次に自分たちの立論の議論を守ります。否定側第一反駁で肯定側立論への反駁が行われているので(⑤)、その否定側第一反駁をさらに反駁するということになります。もし余裕があれば、自分たちの立論で出した議論を強める証拠資料を読むこともできます。

 

⑦否定側第二反駁ーなぜ自分たちが勝ったか理由を説明する

自分たちが勝った理由を説明します。ここではcost-benefit anaysisという分析が一般的です。つまり肯定側が論じているメリットよりもデメリットの方が問題が深刻であると述べることです。この時、特に自分たちの議論で相手にあまり攻撃されていない強いものに焦点化して自分たちが勝った理由を述べると良いでしょう。最後にジャッジに投票をするようにという強いメッセージを残してスピーチを締めましょう。なお、第二反駁では今までの議論をまとめてcost-benefit analysisをすることや⑥肯定側第一反駁への反駁はできますが新しい議論を始めることはできないので注意が必要です。

 

⑧肯定側第二反駁ーなぜ自分たちが勝ったか理由を説明する

基本的な考え方は⑦否定側第二反駁と同じです。cost-benefit analysisをし、メリットがデメリットを上回っていると述べます。そして自分たちの強い議論を提示しジャッチに投票を求めましょう。

 

まとめ

このブログではフォーマットとスピーカーの役割について説明してきました。

フォーマットごとに各スピーカーの役割が決まっていて、意外とやることが多いということを理解していただけたと思います。このフォーマットやスピーカー役割はあくまで基礎中の基礎です。例えば否定側立論でデメリットを提示しないようなやり方(クリティークなど)もあります。

 このブログでもそう言った発展的な内容も取り扱っていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いいたします。長文を読んでいただきありがとうございました。質問、反論などがあればぜひコメントをしてください。