メグミロク

英検1級保持者・日米交歓ディベート 日本代表が英語教育やディベートについてデータを用いながら解説するブログです。

正常性バイアスとは?

こんにちは。メグミロクです。

 最近は新型コロナウイルスで経済、社会に様々な影響が出ています。様々なニュースが飛び交い、フェイクニュース、デマもまた横行しています。

 そのような中で1つの指針を示してくれるTEDxトークがあります。今日はそのTEDxトークについて書きたいなと思います。まずはTED・TEDxが何かを説明した後本題に入りたいと思います。TED・TEDxなんて知ってるよという方は正常性バイアスとは何かからご覧ください。

 

1. TED・TEDxとは

 多くの皆さんがTEDをご存知かと思います。NHKのスーパープレゼンテーションであったり、大学の授業で見たという方も多いのではないでしょうか。念のためおさらいしましょう。TEDのホームページから引用した定義を見てみましょう。

TED is a nonprofit devoted to spreading ideas, usually in the form of short, powerful talks (18 minutes or less). TED began in 1984 as a conference where Technology, Entertainment and Design converged, and today covers almost all topics — from science to business to global issues — in more than 100 languages. Meanwhile, independently run TEDx events help share ideas in communities around the world. 

(TEDのHP, 2020年4月2日閲覧, https://www.ted.com/about/our-organization)

筆者訳:TEDとはアイデアを広めることに専念した非営利組織で、一般に短く力強いトークの形式を取る(18分かそれ未満)。TEDは1984年にテクノロジー、エンターテイメント、デザインが集まるカンファレンスとして始まった。今日では100以上の言語で科学、ビジネス、そして世界的問題などほぼ全てのトピックがカバーされている。また独立して開催されるTEDxイベントは世界中のコミュニティにアイデアを共有するのを助けている。

 

 TEDはテクノロジー、エンターテイメント、デザインの頭文字をとっているのですね。簡単にまとめるとTEDは、多くの分野において「アイデアを広めること」をミッションに活動する非営利組織といったところでしょうか。ところで最後にTEDxについて記載がありました。今回紹介する動画はTEDxの動画なのでこれについても説明をしたいと思います。

A TEDx event is a local gathering where live TED-like talks and performances are shared with the community. TEDx events are fully planned and coordinated independently, on a community-by-community basis. The content and design of each TEDx event is unique and developed independently, but all of them have features in common.  (TEDのHP, 2020年4月2日閲覧, https://www.ted.com/about/our-organizationhttps://www.ted.com/participate/organize-a-local-tedx-event/before-you-start/what-is-a-tedx-event ) 

筆者訳:TEDxイベントはTEDのようなトークやパフォーマンスがコミュニティに共有される地元の集まりである。TEDxイベントはコミュニティを基礎とし、独立して十分に計画され運営される。各TEDxイベントの内容やデザインはユニークのもので独立して発展するが全てのTEDxイベントは共通の特徴を持つ。

 

 共通の特徴ってなに〜〜って思った方もいらっしゃるかと思います。実はこの後に"TED's format" (TEDの形式)、"Diversity of topics"(トピックの多様性)、"Community-driven and bias-free content" (コミュニティー主導で偏見なき内容)というのが続きます。※()内は筆者訳

 

 話が逸れてしまいましたがTEDxとはつまり地元で開催されるTEDに似たようなイベントです。上記の「共通の特徴」やミッションである「アイデアを広める」といったことに忠実なイベントでもあるんですね。

 

 さてここからが本題です。今回のコロナウイルスの1件で私たちが考えなければならないもの、それは「正常性バイアス」についてです。

 

2. 正常性バイアスとは

 正常性バイアスとは心理学の用語だそうです。正常性バイアスについてはTEDxのトークの中にもあるのでここでは詳しくは触れませんが、簡単に定義だけ。

正常性バイアスとは「正常化の偏見」と呼ばれる心理学用語の一つで、予期しない事態に対峙した際に、「ありえない」「考えたくない」という心理状況に陥りやすい人間の特性のことを指します。正常性バイアスが働くと、予期しない事態が発生しても、自身が直面している状況が日常とさほど変わらない状態(正常な状態)であると半ば自動的に認識しようとします。

ニュートンコンサルティング2020年4月2日閲覧、https://www.newton-consulting.co.jp/bcmnavi/column/normalcy_bias.html

 

 うん。なるほど。確かに今の状況にも当てはまりそうではないでしょうか。つまり正常性バイアスとは「予期しない事態に直面しても日常と変わらないと認識してしまうこと」といったところでしょうか。

 もっと詳しく知りたい方は上記のURLを開いて見てください。

 

3. 今回のTEDx

今回のTEDxトークは土橋恵さんによって2018年に行われたものです。

タイトルは「Killed by yourself -あなたの身を守るもの」です。

英語のトークですが、今回は特別に土橋さんにも許可をいただきこちらに筆者訳のスクリプトを掲載いたします。彼女はトークの中で正常性バイアスがどのように私たちに影響を与えるのか、それを避けるにはどのようなことを気をつければ良いのかを話してくれています。彼女からのコメントを抜粋します。

“私は大丈夫だろう”、“何も起こらないだろう”。

私たちに備わる“正常性バイアス”によって生まれるこの油断は 、時に最悪の事態を招く。 例えば、東日本大震災では、多くの人が“うちまで津波は来ないだろう”と考え、避難をしなかった。

これからの社会を生きていく上で、そういった自然災害やテロ事件などに巻き込まれる確率は高くなっていくであろう。その中で、私たち、特に日本人は、事故や事件をどこか遠くの存在と感じていないだろうか。ニュースをみて恐怖を感じても、翌日には忘れてしまっていないだろうか。だが、私たちの身にも同じことが起こるかもしれないのである。このまま平和ボケをしていてはいけない。自分の身を守らなければいけない。そのためにはどうすればいいのか。

このスピーチが、危機意識の持ち方を再考するきっかけになれば幸いである。

 

では、是非今の新型コロナウイルスでパニックになっている世界情勢を鑑みながら見て見てください。

youtu.be

 

 以下スクリプト 

The sound of a string quartet traveled through the world’s largest unsinkable liner, the Titanic.  The sound and the mood made people forget they were in the middle of the ocean.  People were happily dancing, eating and drinking.  A few hours later, crash!  The Titanic had collided with an iceberg and started to sink.  However, there were not enough lifeboats for everyone.  As a result, approximately 1500 out of 2200 people sank to the bottom of the sea.  Why didn’t they have enough lifeboats?  It was due to a killer in ourselves, “normalcy bias.”  Today, I would like to talk about how the normalcy bias affects us.  Through my speech, I will give you a tip to protect yourself when an emergency situation occurs.

弦楽四重奏の音が世界一大きい沈まない船「タイタニック号」に響き渡ります。その音や雰囲気は乗客が海のど真ん中にいるということを彼らに忘れさせます。人々は楽しそうにダンスをしたり飲食をしたりします。数時間後、衝突!タイタニック号は氷山にぶつかり沈み始めました。しかし、全員分の救命ボートはなかったのです。その結果、約2200人中1500人が海の底へ沈みました。なぜ彼らは十分な救命ボートがなかったのでしょうか。それは、私たちの中にいる殺人鬼「正常性バイアス」のせいだったのです。今日は正常性バイアスが我々にどのように影響するか話したいと思います。私のスピーチを通して、緊急事態が起こった時に自分を守るヒントをあげたいと思います。

              The Disaster Prevention System Institute defines “Normalcy bias” as “a human instinct that underestimates the emergency situation to prevent the brain from getting tired of every single accident.”  Because of this bias, we sometimes think a situation is not dangerous and nothing will happen to us.  When the Titanic was made, people didn’t load enough lifeboats because they believed that the Titanic would never sink.  This idea came from the normalcy bias.  Because of it, uncountable lives were killed in the past, and people will keep on getting killed in the future. 

防災システム研究所は「正常性バイアス」を「小さな出来事一つ一つに反応していれば心の平穏が保てないため、心の機能には些末なことで自分に直接影響のないことは、正常の範囲と自動認識する仕組み」と定義しています。このバイアスのせいで、私たちは時々、危険ではないし何も私たちには起こらないと考えます。タイタニック号が作られた際、タイタニック号はどうせ沈まないだろうと考え十分な救命ボートを積まなかったのです。このアイデア正常性バイアスから来ています。これのせいで、数え切れない命が過去になくなり、これから先も命が失われていくでしょう。

The same thing has happened in modern Japan.  On March 11th in 2011, a big earthquake hit Tohoku.  After that, a Tsunami warning had been posted.   Although people knew the danger, about 70% of people stayed in their home.  Most of the people thought the Tsunami wouldn’t hit them and also thought it might be okay because others didn’t escape.  This bias makes us dismiss proper judgment.

現代の日本でも同じことは起こっています。2011年3月11日、大きな地震が東北を襲いました。そのあと、津波警告が勧告されました。危険を知っていたにもかかわらず70%の人は家に居たままでした。多くの人々は津波が彼らを襲うとは思っていなかったし、ほかの人も逃げてないからおそらく大丈夫であろうと考えました。このバイアスが正当な判断を捨てさせたのです。

              The normalcy bias is able to change our best times into a nightmare.  “We should go back.”  “Hey, come on mom, nothing will happen to us.”  I said these words in happy excitement.  On the last day of 2015, I was in Germany with my mother enjoying fireworks.  My mother tried to make me go back to the hotel because we heard someone screaming and there were many drunken people.  However, I didn’t pay attention to her and ended up having a terrible experience.  Someone threw a firecracker at me and tried to steal my wallet.  It was a horrifying moment.  Although the situation was obviously dangerous, I kept staying there.  I should have gone back to the hotel.  I still regret it.  The bias changed my best time into a nightmare.

正常性バイアスは最高の時を悪夢に変えることがあります。「戻ったほうがいいよ」「お母さん、何言ってるの、何にも起こらないよ」私は興奮のうちにこの言葉を言いました。2015年の最後の日、私は母とドイツで花火を楽しんでいました。誰かが叫んでいるのを聞き、また多くの酔っぱらいがいたので母は私をホテルに戻そうと説得しました。しかし、私は母の注意を聞かず、恐ろしい経験をする羽目になりました。誰かが私に爆竹を投げ財布を盗もうとしました。恐ろしい瞬間でした。状況は明らかに危険だったのにそこにずっと留まっていたのです。ホテルに戻っているべきでした。私はまだ後悔しています。そのバイアスが最高の時を悪夢に変えたのです

              You might have similar experiences.  When an earthquake happens, you are like “oh, I think it was level 3”, aren’t you?  Or, when you take a taxi or bus, you totally forget the existence of a seatbelt, don’t you?  Everyone has normalcy bias, and it surely has an influence on our behavior.  Moreover, nobody knows what will happen next.  An emergency would happen 10 years later, 3 days later, or the next moment.  That’s why everyone has to think about strategies to protect yourself. 

あなたも似たような経験をしたことがあるかもしれません。地震が起こったときあなたは「あ!これは震度3だと思う」みたいになっていませんか?またはタクシーやバスに乗ったときシートベルトの存在を忘れていませんか?みんな正常性バイアスを持っており、私たちの行動に必ず影響を与えています。また、次に何が起こるかなんて誰にも分かりません。緊急事態は10年後に起こるかもしれないし、3日後かもしれないし、次の瞬間かもしれません。だからこそ全員があなた自身を守る戦略を考えなければいけません。

Since the normalcy bias is a human instinct, it is difficult to remove it completely.  However, we can control this instinct to some degree.  To reduce this bias, it is necessary to get an "antibody" to the bias.  Unless you get it, you will be killed by yourself.

正常性バイアスは人間の本能なので完全になくすことは難しいです。しかし私たちはある程度この本能をコントロールすることができます。このバイアスを減らすためにはバイアスへの「抗体」を得る必要があります。得られなければ、あなたは自分自身によって殺されることでしょう。

How can we get an antibody?  My suggestion is asking “what if” questions.  Please imagine the possible dangers by using “what if” questions.  What if you were in the scene of an accident?  What if a big earthquake hits on where you are planning to go?  What if you heard the sound of an explosion?  What kinds of danger will there be?  You can ask “what if” questions when you are watching the news or when you go somewhere that you don’t know well.

ではどのように抗体を得ることができるのでしょうか。私の提案は「what if」の質問を問うことです。「what if」の質問を使って起こりうる危険性を想像してみてください。もしあなたが事故現場にいたら?もし行こうとしているところでじしんが起こったら?もし爆発の音を聞いたら?どのような危険がある?ニュースを見ているときやあまり知らない場所に行ったとき「what if:」の質問をすると良いです。

By simulating the situations, we get an antibody to the bias and there is a lower possibility that we'll face a dangerous situation.  When an emergency actually happens, it is important to focus on grasping what is happening at the moment, not what others are doing.  To do so, please ask yourself, “what if this situation is actually dangerous?”  This question is the key, because not everyone can behave calmly and make good decisions.  You would be able to judge the situation more calmly.

状況をシミュレーションすることでそのバイアスへの抗体を得ることができ、危険な状況に遭遇することが少なくなります。緊急事態が実際に起こったとき、他の人が何をしているのかではなく、その瞬間に何が起きているかを理解することに注力することが大切です。そうするために、あなた自身に問うてください、もしこの状況が本当は危険だったら?と。全ての人が冷静に振る舞い良い決断を下すことができるわけではないのでこの問いが大切です。もっと冷静に状況判断ができるようになるでしょう。

 

After I knew about the bias, I came to consider something unusual such as a big sound or even a little quake in connection with danger, and ask myself “what if” questions.  I am not saying don’t go anywhere or don’t do anything, but I want you to notice that your casual decision based on “what if” question may change your destiny. 

このバイアスを知ったあと、何か普段と違うこと、例えば大きな音や、小さな揺れでさえも危険と結びつけて考えるようになり、「what if」を自分自身に問いかけます。どこにも行くなとかなにもするなと言っているわけではありません。ただ「what if」を元に何気なく決めたことがあなたの運命を変えるかもしれないということに気づいて欲しいのです。

 

 Through the “what if” questions, you can realize what you should do for the emergencies easier than ever before.  Here is a successful example.  According to the Japan Society for Natural Disaster Science, on that day, one city succeeded in saving 99.8% of children’s lives.  In the city, there is a word that has been passed down through the generations.  That is, “津波てんでんこ”, which means, run away without caring other people when the earthquake happens.  Based on this word, people ran away from the ocean as soon as possible and saved own lives.  What I want to emphasize is that many “what if” questions are underlying in this word; “what if tsunami actually comes to the house?”, or “what if I fail to escape by waiting someone or instruction?”  Thanks to this, people in the city knew what to do under the emergency situation.  On that day, escape or not decided the outcome.  “What if” was the key to save the lives from the killer. 

「what if」を通して、緊急の際に何をすれば良いのかを今までよりも簡単に気づくことができるでしょう。成功事例もあります。日本自然科学学会によるとその日ひとつの都市が99.8%の子供の命を救うことに成功したそうです。その都市では世代を通して伝わっている言葉があります。それは「津波てんでんこ」で、地震が起きた時にはほかの人に構わず逃げるというものです。この言葉をもとに、彼らは海からなるべく早く逃げ命を救ったのです。強調したいのはこの言葉には多くの「what if」が基礎となっているということです。津波が実際家まで来たらどうしよう?や誰かや指図を待っていて逃げ遅れたらどうしよう?など。このおかげでこの都市の人々は緊急事態下で何をするべきか知っていたのです。その日、逃げるか逃げないかが結果を決めたのです。「what if」は殺人者から命を守る鍵だったのです。

 

 In today’s society, where everything changes rapidly, it is possible that something dangerous might happen in this otherwise safe country, Japan. Unprecedented acts of terrorism are happening in many countries, on a large scale.  Japan is also more likely to have natural disasters than in other countries.  In these situations, we get used to a lot of awful news.  We take peace for granted, don’t we?  It’s too late to regret after being involved in accidents or disasters.  The past teaches us.  The news teaches us.  And this speech teaches you.  Ladies and gentlemen, it is only you who can protect yourself from the killer in yourself.

全てのものがめまぐるしく変わる今日の社会ではこの安全な国でも何か危険なことが起こりえます。先例のないテロが多くの国で、大規模に起こっています。日本はほかの国よりも自然災害が起こりやすいでしょう。このような状況で多くのすさまじいニュースに慣れてきています。私たちは平和を当たり前に考えているのではないのでしょうか。事故や災害に巻き込まれてから後悔するのでは遅いのです。過去は私たちに教訓を与えてくれます。ニュースは私たちに教訓を与えてくれます。そしてこのスピーチはあなたに教訓を与えます。みなさん、自分の中の殺人鬼からあなたを守れるのはあなたしかいないのです。

 

4. まとめ

いかがでしたでしょうか。

私たちは今この情報社会の中で何を信じていいのかが分からなくなっています。ただ確かなことはwhat if questionを自分自身に問いかけることで自分の行動が変わってくるということです。「不要不急」の外出をしたらどうなるか、もし自分がかかって自分の家族に感染を拡大してしまったらどうするか。この想像力が今大切なのではないでしょうか。

 

最後まで読んでくださりありがとうございます。 コメントお待ちしております。